「戦国を歌う」・・・小栗さくら さん

小栗さくらさん 人物編のトップは、戦国時代を中心に歴史に特化した曲を歌う女性ヴォーカルデュオ「さくらゆき」の一人である小栗さくらさんをご紹介します。
 さくらさんは一部楽曲の作詞・作曲を始め、書籍やネット上では歴史コラムも執筆、また歴史アイドル(歴ドル)としても映画やTV・ラジオ等のメディアで活躍中というマルチタレントです。最近は歴史アイドルも増えてきましたが、特筆すべきは博物館学芸員資格を持っておられること。まさに才媛という言葉がピッタリな「歴史系アーティスト」です。
 好きな言葉は「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり(上杉鷹山)」、東京都在住。


小栗さくらさん 〜歴史上の好きな人物について教えて下さい。

●直江兼続公

上杉家の家老。生涯上杉景勝公に仕えた武将であり、一番最初に好きになった戦国武将です。文武両道と伝わっている兼続公ですが、私は文化・政治面に深く興味があります。朝鮮の役の際には家臣たちに略奪などの狼藉を禁止し、戦場であるにもかかわらず貴重な文献等が焼失するのを憂えて収集するほどの愛書家。また、関ケ原の戦い以後は減封された藩政の立て直しや、今も残る直江石堤、江戸時代米沢藩藩校教育の基礎となる「禅林寺文庫」などからも、その手腕が輝いたのは人生の後半だったのでは…と思います。

●真田信幸(信之)公

 真田昌幸公の長男。上田・沼田・松代という3つの場所で苦悩しながらも真田家を守り続けてきたことに魅力を感じます。関ヶ原の戦い・大坂の陣で豊臣方についた弟幸村(信繁)公のような華々しさは語られないものの、真田家の精神を秘めて持ち続けた人だと思います。もともと上田にあった長谷寺(ちょうこくじ)を松代にも長国寺(ちょうこくじ)という名で作り、真田家の墓所としたことからも故郷への想いが感じられます。『真田三代』という時には幸隆公・昌幸公・幸村公が語られますが、三代の中に名前を入れて欲しいと切に願っています。


〜持ち歌の中で特にお気に入りの曲などありますか?

●『雷霆の龍』(直江兼続公イメージソング)

 一番最初に作った曲というのもありとても思い入れが深い1曲です。作詞も作曲も初めてのことで、当時はダメ出しをしてくれる人もいなかったので、「逆茂木」という言葉から始まるという、歴史好き以外には「?」という始まり方をするものとなってしまいました(笑)でももちろん気に入っています。米沢に夜行バスで向かい、夜が明ける前にマイナス14度の気温の中、米沢駅から「直江石堤」まで歩き銀世界を体験して作った曲で、あの寒さは今でも忘れられません。

●『炎の月』(真田幸村(信繁)公イメージソング)

 幸村公の大坂の陣をイメージした曲なのですが、思い通りの歌詞が中々書けずに何度も書き直した記憶があります。特に幸村公は世間でも人気ナンバーワンといってもいい武将なので、世間の皆さんのイメージと自分の中のイメージが同じものなのか悩んだりもしました。結局は自分の思うままに作ってしまったのですが(笑) 悩んだ分だけ愛情も注ぎましたし、とても好きな曲です。ライブ中のサビ「赤き〜」の部分の振付は手話からヒントをもらいました。

●『関ヶ原』(関ヶ原の戦いイメージソング)
さくらゆき1番が西軍(石田軍)、2番が東軍(徳川軍)という、珍しく両面から歴史を描いた1曲です。「天下分け目の関ヶ原」というほどの大きな戦いだったので、これは両面から描きたいと思いました。それぞれに自分の信念があったでしょうし、相手に対して思うところもあったはずです。そして歌詞には平家物語の冒頭を織り交ぜ、「盛者必衰」で今までの栄華が続くとは限らない、今勝ってもいつかは覆されることもある…という、歴史の繰り返しを描いた曲でもあります。歌詞だけ見ると眉が寄ってしまいそうですが、ノリの良い曲なのでライブの時に皆さんで「掲〜げよ掲げ己が旗〜」と手を振り上げて貰えるのも嬉しい1曲です。


〜ユニット結成のきっかけや、色々なエピソードなどあれば教えて下さい。

 今でこそ歴史を歌う方々が多いのですが、私たちが始めた当初は歴史を歌う人って演歌の方くらいだったんです。演歌も現代目線からその人を歌うものが多く、その人物の心情を想像して…というのは中々ないんですよね。
 ゆきとはもともとアルバイト先が一緒で、彼女に歌をやろうと持ちかけたのは私でした。二人とも歌も歴史も好きだということから「じゃあ歴史の歌を作ってみよう」ということになったんですね。史跡を巡りながらあれやこれやと意見を出して、冗談がきっかけで作った歌も実はあります。
 最初はフリーで各地のイベントに自分たちで申し込んで2曲くらいのライブをしていました。でも大抵の人の反応は「歴史の歌〜?」というもので、最初はかなり訝しがられた記憶があります。徐々に曲数が増えていき、歴史イベントに出演するようになって「歴史の歌っていいね」「歌から歴史に興味がわいてきた」という嬉しい言葉をいただけるようになりました。地方遠征が多いので、ライブの時は大抵史跡めぐりがワンセットになっているのはご褒美をいただいている気分です。


〜最後に、今後の活動や目標についてお願いします。

さくらゆき「さくらゆき」としても「歴ドル」としてもやりたいことは同じで、歴史を好きになってもらうきっかけを自分たちが作れたら…という思いでいます。難しい本は興味がなかったら中々手に取れないけれど、歌であったりブログであったり、自分たちが発信するちょっとしたものから興味が湧いてくれたら嬉しいと思っています。また、「歴史」というと遠い昔の出来事のように思ってしまいますが、当時の人も今生きる人も辛いことや楽しいことがあって生きているので、聴いている人の人生ともリンクできる部分があればいいな…とも思います。
 そして戦国時代に各地の人が主役だったように、歴史から地方活性化ができればいい、そのお手伝いができたらいいとも思っています。
 これからも歴史に真面目に取り組みつつ、伝わりやすいものが作れるように精進していこうと思います。


小栗さくらさん個人ブログ→ 歴ドル・小栗さくらの諸行無常な日々
小栗さくらさんコラム→ 時代劇専門チャンネル「歴ドル・小栗さくらの必殺発見伝」
歴者アーティストさくらゆき&小栗さくら公式HP

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